国立総合児童センター「こどもの城」閉館に寄せて

 1985年11月にオープンした渋谷区神宮前のこどもの城が2月1日に閉館しました。30年間、子どもの遊びを通して、人とのふれあいから生まれる、心地よさ、喜びや達成感を大切にしてきたこどもの城。芸術、体育、音楽、造形、科学、保育、保健に関する多彩なプログラムによって、子どもたちが本物に触れる体験を作り出してきました。

今の子どもたちが育つ環境は、ボール遊びができないなど規制が多い公園、自由に遊べるような場所が少ない、小さい子どもだけで遊びに行かせるには不安な社会など、全身を使って思いっきり遊べる機会が少ないと感じます。子どもの遊びは自発性、創造性、人を思いやる心、役割、責任感、社会のルールを育むかけがえのない栄養だ、とこどもの城では伝えていました。こういった遊びの伝承が今は途絶えてしまったからこそ、子どもが思う存分遊べるよう大人が環境を整える必要があると私は考えます。

 また、身近に子育てをしている人が少なくなり自分の子どもを育てるまで赤ちゃんに触れたことがない親、核家族で頼れる親戚も近くにいない孤立した子育てをしている方など、子育てをする家族にとってもこどもの城は大きな支えになっていたことでしょう。

 こどもの城がオープンして間もなく、私は青年ボランティアとして数年間通いました。こどもの城はまちの中にある13階建ての大きな四角いビルです。その建物の中を温かく、心のふれあえる感動できる場所にしてきたのは、そこに関わる人々です。職員の方々を初め、ボランティア、専門家の方々、パフォーマンスを披露してくださる方、そして来館する子どもたち、大人たちに出会えたことは、私にとって大きな財産です。施設というのは場所の魅力ももちろんありますが、その場所にどのような人が集うのかが大切だと学びました。

 行政の仕事も、施設等の器を整備することはもちろん大切ですが、そこに関わる人がどのような人か、また、その人をどのように育てていくのかが重要だと考えます。継続的な取り組みのためには、てっとり早くできる人を連れてくるという事でなく、関わる人を育てていくことが必要です。

市内には児童館5館とこども広場19カ所があります。「まちづくりはひとづくり」。行政にお任せではなく、様々な方が関わってふれあいが持てるまちにしていきたいです。(じつかわ圭子)